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猫への恩返し


猫のあしあと (講談社文庫)
猫のあしあと (講談社文庫)
町田 康


先日、泉悦子監督のドキュメンタリー映画『みんな生きている』を観た。
大阪は十三にあるシアターセブンという小さな映画館。9/27.28は上映後、監督と実際に猫の保護に携わっている方のお話も聞けるとあって、ミニシアターとやらに行くのが初めての私は少し緊張していた。映画館はこじんまりしていてあったかい雰囲気。お客さんは多くはなかったが映画の中の笑う箇所などでみんな猫好きなのが伝わってきた。恐らくほぼ全員が猫飼いだったと思う。
映画は想像していたものとは全く違っていた。きっと殺処分の現場を映し出したりするのだろうと覚悟していたが内容は比較的ソフトで、監督の家にやってきたトラ猫エルビスが子猫から逞しい雄猫へと成長していく様と、その間に新たに加わった三匹の猫たちのほのぼのとした日常がメインになっている。四匹の猫たちが喧嘩しながらも少しずつ仲良くなっていく様子が微笑ましかった。
その他にも猫の避妊手術や去勢手術の過程も撮影されており、アメリカやドイツのアニマルシェルターのことなど勉強になることも多かった。全般的に押しつけがましさというものがなく、観終わった後も決して暗い気持ちになることもなかった。寧ろ不思議なことに爽やかな気持ちになれる。
上映後には観客も巻き込んでのトークショーもあり、その気さくな人柄にも好感が持てた。


動物保護先進国といわれるドイツの動物保護施設ティアハイムベルリンのスタッフが、
「国もベルリン市も何もしてはくれません」
と語っていたことが意外だった。
この施設は民間で運営されており、寄付や会費で運営は賄われているという。
私自身は野良猫を保護し去勢・避妊手術を行う活動は有意義だとは思うが、それを再び外に放すことには疑問を感じる。ただ野良の仔猫が人に懐くタイムリミットは生後二ヶ月とも言われており、最早成猫になってしまった彼らを家庭猫にする難しさがある以上、致し方がないことなのかもしれない。ただしどんなに善意のボランティアが活動しても猫を無責任に増やす飼い主が仔猫を捨てたりする事態は収まらないだろうからイタチごっこになってしまうのではないかと心配だ。
また地域住民との話し合いの末に野良猫たちを管理している団体とは別に一般の猫好きが猫に餌を与えてしまうことにも心情は理解するが同調はできない。
世の中には猫が嫌いな人もいるのだという社会的な視点が欠如していると思う。
ただ悪いのは猫を捨てたり、避妊手術もせずに外飼いにする無責任な飼い主だということだけでは確かだ。
映画の後の挨拶で猫を保護する活動をしている女性が年老いた一人暮らしの女性たちが避妊もせずに猫に餌を与えてしまうという話をしていた。所謂「アニマルホーダー」であり、避妊手術についての話を持ちかけても頑なでなかなか応じてはもらえず、心を通わせるのにもかなりの時間を費やすという。
動物との共生、人と人の関わり方の難しさが伝わってきた。

今年の六月に生後二ヶ月のトラ猫の赤ちゃんを拾ったのがきっかけで、人間に捨てられた犬や猫の殺処分問題と私なりに真面目に向き合いたいと思うようになり、さまざまな本を読んでいる。自宅で何匹もの犬や猫を保護し、必死で飼い主を探している人の活動を知ることができたが、正直、虐待や殺処分の問題は残酷過ぎるということと、自分も含めた人間の身勝手さに暗澹たる気持ちになったりもした。実際、犬の殺処分は十年前に比べるとかなり減っており、将来に期待が持てそうな気がする。だが、繁殖率の高い猫の殺処分の数はほぼ横ばいでなかなか改善されないのが現実なようだ。
そんな中でも楽しんで読んだのは町田康氏が書かれた猫のエッセイで、随所に笑いが散りばめられた猫好きならば必読の一冊だ。
ココアとゲンゾーという二頭の猫を飼っている町田氏だったがエッセイが巻数を重ねるに従い猫たちの数がどんどん増え、ついには収拾がつくのかと読者が不安になるまでになってゆく。町田氏は大事にしていた仔猫ヘッケちゃんが死んだことがきっかけでボランティア団体から猫を預かることになるのだが、この団体が腹立たしいまでにずうずうしい。(※後に文庫版の解説でこういった保護依頼(私には町田氏の善意につけこんだ押しつけとしか思えないが)が動物のボランティアの世界では然程驚くにあたらないことが説明されていたがならば尚更関わりたくないと思われた)そのずうずうしささえもユーモアを交えて書ける町田氏は矢張り作家である。だが、そういった活動や悲しい現実を知ることによって「では、私も保護猫を預かろう」とはならず、寧ろ「私には無理やなー」という感想を抱くに到った。別に町田氏はみんなに猫の保護活動を推進しようとは思ってはいないのだろう。そういったプロパガンダのない本だからこそ楽しんで読めたのだ。ただ後書きに書かれていた町田氏の言葉には深く心を打たれた。


――猫に限らず、自分のものと思っている多くのもの、気力や体力や知力やその他のものも実は預かりものなのかもしれない。他から預かったものを粗略に扱ってはならない。傷つけてはならない。預かったときと同じ状態で、或いは利子をつけて返さなければならない。


我が家には五年前に拾ってきたスオミという宝物のように大事にされている猫がおり、今回トラ猫を拾う際にもかなりの勇気が必要だった。家族の後押しがなければ捕獲を諦めていただろう。もし万が一感染するような病気を持っていたらと思うと気が気ではなかったし、幸い病気はなかったものの、箱入り娘として可愛がられてきたスオミが虎之助と名づけられたやんちゃ坊主に追い回されて相当なストレスを抱えているのを見ると、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
ただ、だからといって虎之助を拾ったことを後悔しているかといえばそうでもなく、人見知りでお姫様気質のスオミと物怖じせずガキ大将気質の虎之助と楽しく暮らしている。この子たちが死ぬ頃には私も相当な歳になっている訳で虎之助は私が飼う最後の猫になる可能性もある。スオミ同様終生大事にしていきたいと思っている。
私にとって猫を飼うということは部屋の中に幸せな毛の塊が存在するということだった。そのふわふわの毛並みを撫でるだけで心がほんわか暖かくなった。
過去飼ってきた猫たちからもどれだけの幸せを与えられてきたか知れない。だが自分も結構歳を重ねてみるとそれ相応の責任感というものが漸く芽生えてきて、この小さな命をいかに守り育てていくかにも配慮できるようになってきた。スオミと虎之助はただ単に可愛いだけではなく私が過去拙い飼い方をしたすべての動物たちへの恩返しのような気持ちで飼っている。ただし過去への反省から決して身の丈から外れたことだけはしないと決めている。
今回の映画を観たことによって、猫を保護することはできないけれど、募金や愛護団体の会員になることで少しでも役に立ちたいと考えるようになった。
この映画を猫好きな人にも嫌いな人にも一人でも多くの人に観てもらえたらと願っている。
そして飼い主のいない猫たちに優しい飼い主が見つかりますようにと。


みんな生きている
〜飼い主のいない猫と暮らして〜
(2014年/日本/91分)
【2014/9/27(土)〜10/10(金)】まで十三・シアターセブンで上映

http://www.theater-seven.com/


みんな生きている 公式サイト

http://www.sepia.dti.ne.jp/tess/cat/index.html


フェリシモ猫部

神戸に本社を置く通販会社の猫好きサイト
募金活動や譲渡会など犬と猫の保護活動にも積極的に関わっています。

http://www.nekobu.com/?tid=rnvg_NEKOBU

  • 2014.10.02 Thursday
  • 23:56

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